イントロダクション

映画史において長らくマージナルな存在であり続けた女性たち。それは、女性という役割が映画のなか、社会のなかで虐げられてきたことの表れであり、また女性として監督をすることの評価が見逃されてきたことも意味します。本特集では、日本未公開作を含むフランス映画の傑作を通じ、映画と女性をめぐる諸問題を再考します。上映時には、作品解説の実施を予定しています。

上映作品紹介

『サラマンドル』 La Salamandre

1971年/124分/DCP

監督:アラン・タネール

出演:ビュル・オジェ、ジャン=リュック・ビドー、ジャック・ドゥニ

©Filmograph

不起訴に終わった2年前の事件をもとに、ポールとピエールはテレビ番組の脚本を任される。ふたりは、それぞれのやり方で被疑者の女性・ロズモンドの輪郭を描こうとするのだが、ロズモンド本人と接触したことにより、事件はますます迷宮入りしてしまう。15歳で不良と付き合い、17歳で未婚の母となった23歳の女性をビュル・オジエが熱演する。スイス・ヌーヴェルヴァーグの巨匠アラン・タネールの名を世界に知らしめた傑作。

『海賊のフィアンセ』 La Fiancée du pirate

1969年/108分/DCP

監督:ネリー・カプラン

出演:ベルナデット・ラフォン、ジョルジュ・ジェレ、ルイ・マル

©Lobster

シュルレアリスムの詩人としても知られた女性監督ネリー・カプランによる、ポップでキュートでラディカルな作品がついに日本上陸! ジプシーのマリーは田舎町で魔女呼ばわりされてきた母親と暮らし、町民たちからは虐げられてきた。母の死をきっかけに、彼女はこれまで搾取を繰り返してきた男たちへ、売春による復讐を実行する。ベルナデット・ラフォンによる叛逆的・戦闘的な女性像に、鑑賞者たちは釘付けになるだろう。

『雪』 Neige

1981年/90分/デジタル

監督:ジュリエット・ベルト、ジャン=アンリ・ロジェ

出演:ジュリエット・ベルト、ジャン=フランソワ・ステブナン、パトリック・シェネ

©Studiocanal/Tamasa

パリの歓楽街ピガールには、「Neige(雪=ヘロイン)」が蔓延している。バーテンダーのアニタは、ヘロインの供給が断たれたことで体に支障をきたしたベティを救うため、友人たちとともにヘロインを求め奔走する。しかし着実に警察の包囲網は狭まり、彼女たちは袋小路へと追い詰められる。ゴダール、リヴェットらの作品でおなじみの女優ジュリエット・ベルトが満を持して監督・出演した。

『盗むひと』 La voleuse

1966年/88分/DCP

監督:ジャン・シャポー

出演:ロミー・シュナイダー、ミシェル・ピコリ、ハンス・クリスチャン・ブレヒ

©LeBureaufilms

ジュリアは19歳の時に産んだ子供をやむなく手放した。しかし、出産から6年後のある日、夫に自らの出産経験を告白し、わが子を取り戻そうとしていることを告白する。ロミー・シュナイダーとミシェル・ピコリの怪演を光らせるのは、マルグリット・デュラスの脚本。「脚本を読んだ瞬間、私の心は決まった。それは悲しみ、掻き立てられた感情、諦念といった若い女性が経験するあらゆる感情を表現できる可能性を秘めた、夢のような役だった」(ロミー・シュナイダー)

『ソルフェリーノの戦い』 La Bataille de Sorférino

2013年/94分/デジタル

監督:ジュスティーヌ・トリエ

出演:レティシア・ドッシュ、ヴァンサン・マケーニュ、アルチュール・アラリ

©DR

2012年5月6日、フランス大統領選挙第2戦の最中、シングルマザーのジャーナリスト、レティシアは決選投票で勝利した社会党を取材すべくソルフェリーノ通りへ向かおうとする。しかしそこに、離婚した元夫のヴァンサンが娘ふたりと面会しようと、指定された日よりも一日遅れてやってくる。『落下の解剖学』のジュスティーヌ・トリエがパリの市街で撮影を行った本作は、社会と個人双方の諍いをドキュメンタリーのタッチでまざまざと浮かび上がらせている。

【本作品は、アンスティチュ・フランセによる上映素材の提供を受けています】

【同時開催】アヌーク・エーメ追悼特別上映

惜しくも今年6月18日に逝去されたフランスを代表する女優アヌーク・エーメさんを追悼して、伝説的映画『ローラ』の続編でジャック・ドゥミ監督がアメリカで撮った唯一の作品『モデル・ショップ』を特別上映します。日本ではめったに上映されることのない作品、この機会にぜひご覧ください!

なお、このイベントは東京日仏学院主催のため、チケット料金は1,100円となります。

『モデル・ショップ』 Model Shop

1968年/92分/アメリカ/デジタル

監督:ジャック・ドゥミ

出演:アヌーク・エーメ、ゲイリー・ロックウッド、アレクサンドラ・ヘイ

兵役に出発する前日、ロサンジェルスの街を彷徨っていたジョージは、白いドレスを着たミステリアスな女性に出会い、衝動的に車で追う。一度は見失いながら、再び目にしたその女性は、「モデル・ショップ」とよばれる素人の写真家たちにモデルを貸し出すスタジオへと入っていく。『ローラ』から8年、ナントからロサンジェルスに流れ着いていたローラを、ふたたびアヌーク・エーメが、憂いを帯びた美しさとともに演じる。

料金:一律1,100円(東京日仏学院のpeatixにて8/9(金)正午より発売開始)